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合格体験記 (第10期)

広汎な情報の獲得からスタート

松田輝雄事務所 松田輝雄

 樹木医応募資格には、業務経験が7年以上あることが条件ですと明記されている。農林業の仕事、研究、職員などの業務経験者である。

 アナウンサーである私はこうした実績を持っていない。

 98年秋、樹木医のことを知ったが、この年は断念。

 99年夏、8月の受験はスケジュール的に不可能。自然に関する書物を読む。

 2000年春、まるで若芽を見つけた喜びと同じような大発見。それは、応募資格に「樹木保護、治療の研究・実務など、あるいは樹木医にふさわしい実 績のある者」が対象と記されていたのだ。

 私は「樹木医にふさわしい者」と思い込むことから受験勉強を開始。受験応募の経歴書には、NHK勤務の時は、農林水産業をテーマに、全国の農地や 山林へ取材に行ったこと、荒れている人工林からのリポート、日本の風景の財産とも言える木曾ヒノキ林からの報告、世界遺産に指定された直後の白神山 系からの15時間に渡るテレビ生中継などの経験から、森林や樹木に強い関心を持っていることや、樹木の実態に通じていることを詳細に記入した。

 さあ、これからが本当の受験生。どんな本や資料から受験体制を作ったら良いのか。参考書はどんなものがあるのか。

 友人の薦めで読んだメソポタミア神話・ギルガメシュ叙事詩に感動。子規の風景論、独歩の季節感や司馬遼太郎の都市文化についての随想などに心を揺 らされていた。

 しばらくしてから我が家の書棚を探索。なんと、樹や森をタイトルにした本がかなりあるのだ。

 「日本の樹木」(中公)「山の自然」「都市の自然を歩こう」(岩波)などの文庫本を取り出す。ブックレットの「落ち葉の手紙」などにもうなずく。

 6月には東京・浜松町での樹木医セミナーに参加。会場販売の「新・樹木医の手引き」(日本緑化センター)は、この時期の私には難しすぎて読めそ うもなく購入をあきらめる。

 「樹木医選抜試験問題集」が私の恩師。過去5年間の問題を読み、関連する資料や本を探しては自分の知識に加えていった。

 お薦めは「樹木医完全マニュアル」(牧野出版)、「樹木のクリニック」(全国林業普及協会)、「中学理科・2分野」(文英堂)、「木を診る木を知る」(緑化 センター)、「木のすべて」(大日本図書)など。

 特に「マニュアル」と「2分野」は5~6回読み込み、何本もの線を引いて頭に叩き込んだ。8月のお盆、つまり受験直前は朝6時から夜10時過ぎま で勉強。これだけ身を入れて机に向かったことは初めて。入学試験も入社の時も、これほど真剣な時間を持ったことは無い。

 今回は気象の問題がかなり出題された。推薦は、本格的な「百万人の天気教室」(成山堂)より、学研まんが解説書「天気100のひみつ」の方が強い味 方となった。

 つまり、樹木医の試験は範囲が膨大で、専門書や教科書だけでは解答できない。「クリニック」や「過去問」との取り組みの間に、普段読み残してい る本や雑誌に目を通したら良いだろう。暑い夏の日、床に寝転びながら雑誌「サイアス」(朝日新聞社)を読んで退屈な時間と戦ったが、掲載記事と同系の テーマが出題された。

 午後は論述。出題テーマは「街路樹の剪定」と「丹沢などのブナ枯れ」に関するもの。丹沢は私のフィールドとして、野鳥や自然探索で毎月のように 出かけている大好きな山で、現地を踏んでいる経験が論述を支えてくれた。

 渋谷にある放送センター周辺の街路樹を点検し、野鳥の営巣の観察や樹木の元気度などのリポートをしたことがある。ナンキンハゼには多く営巣するこ とと樹のサイクルとを考えない時期の剪定や、日本の気候に合わせた樹木管理など数々の番組をふり返えるチャンスを試験が提供してくれた。また、15年 前に資料として参考にした「街の自然12か月」(目黒区役所)のグラビアとデータを思い浮かべながら、600字の筆記式問題に向かった。

 700人を越す樹木医も、様々な考えや働きがあってパワーとなっており、私に出来る樹木医の仕事もあるはず。多くの人に森や樹木に対する関心を持っ てもらうための、語り部として林の中を歩いて行きたいと、考えている。

 古い木や名木の類だけでなく、暮らしのすぐ近くにある普通の樹木、いつも歩く林や森にも愛情をそそぎ、見守り育てて行ける樹木医として、仲間と一 緒に仕事をしていこうと思う。